イズカーゴ(一般名パビナフスプ アルファ)臨床試験結果

(写真:Adobe Stock)

イズカーゴ®(一般名パビナフスプ アルファ)臨床試験結果

2022.7.13(配信元:ステラ・メディックス)

 ここではイズカーゴ®(一般名パビナフスプ アルファ、以下イズカーゴ®)の製造販売承認の根拠になった情報を掲載する。2017年に実施された第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験および2018年~2020年にかけて実施された第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験である。

第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験

目的

イズカーゴ®の安全性に関する情報収集、イズカーゴ®の血漿中薬物動態の評価、ムコ多糖症II型に関連する中枢神経系症状および全身症状に対するイズカーゴ®の有効性の検討。

対象

ムコ多糖症II型被験者14名

方法

第1期(用量漸増試験):2名の被験者に0.01、0.1、1.0および2.0 mg/kgのイズカーゴ®を週に1回の間隔で単回漸増投与、点滴静注を実施しイズカーゴ®の安全性、薬物動態、有効性を評価。

第2期(無作為化試験):12名の被験者を6名ずつの群に分け、1.0または2.0 mg/kgいずれかの用量のイズカーゴ®を週に1回の間隔で計4回反復投与、点滴静注を実施し、イズカーゴ®の有効性、安全性の評価。なお、最初に登録される16歳未満の被験者は1.0 mg/kg/週投与群に割り付け、その他の被験者は無作為に割り付けた。

評価項目

安全性:有害事象、臨床検査(血液学的検査、血液生化学的検査、鉄関連検査、尿検査)、バイタルサイン、12誘導心電図、抗体検査(抗IDS抗体、抗パビナフスプ アルファ抗体)、infusion reaction。

有効性・薬物動態:血漿中薬物濃度、薬物動態パラメーター

探索的有効性:脳脊髄液(CSF)中薬物濃度[第2期]、CSF中ヘパラン硫酸(以下、HS)濃度およびデルマタン硫酸(以下、DS)濃度[第2期]、血清中HS濃度およびDS濃度、尿中HS濃度、DS濃度およびグリコサミノグリカン(GAG)濃度[第2期]、肝臓および脾臓容積(CT検査)、心機能(心エコー検査)。

結果

第1期:血漿中の薬物濃度は用量依存的に検出され、点滴静注時間が3時間であったことから、投与開始後3時間でピークに達した。1名の被験者では、1回目の投与(0.01 mg/kg)後および2回目の投与(0.1 mg/kg)中に紅斑が生じたが、紅斑は速やかに消失した。また、同被験者は3回目の投与(1.0 mg/kg)後に一過性の軽度の発熱(37.5℃)を起こした。もう1名の被験者には副作用はなかった。

第2期:用量漸増試験と同様に薬物濃度は投与開始後3時間でピークに達した。また、薬剤の血漿中濃度プロファイルは初回投与時と最終(4回目)投与時で差がなかった。よってこの条件下では薬剤の蓄積がないことが示された。また、最終投与終了後4〜6時間の時点で、すべての被験者のCSF中の薬物濃度は検出限界未満だった。

CSF中のHS濃度は有意に低下した。血清および尿中のHSおよびDSの濃度は治験期間の前後において、顕著な変動はなかった。また、2名の被験者では、神経認知症状および運動症状の改善が認められた。 本剤が血液脳関門(BBB)を透過し、中枢神経系に有効である可能性が示唆された。

第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験

目的

薬剤の有効性と安全性の確認。

対象

ムコ多糖症II型被験者28名

方法

ムコ多糖症II型被験者(28例、1~26歳)を対象とした多施設共同の非盲検非対照試験を実施。本剤2.0mg/kgを週1回、52週間点滴静脈内投与を行った。

評価項目

主要評価項目:CSF中のHS濃度の変化(52週後)。

主な副次評価項目:中枢神経系症状の有効性として、神経認知機能の発達評価。全身症状への有効性として、血清中HSおよびDS濃度の変化。肝臓/脾臓の容積。

安全性:有害事象および副作用の発現状況、臨床検査(血液学的検査、血液生化学的検査、鉄関連検査、尿検査)、バイタルサイン、12誘導心電図、抗体検査(抗IDS抗体、抗パビナフスプ アルファ抗体)、投与関連反応。

結果

28名の被験者を対象として52週間投与の効果を確認した。CSF中のHSは有意に減少した。発達評価を実施した25名のうち21名は、発達年齢の維持または改善が認められた。

CSF中のHS濃度は、ベースラインから52週目まで有意に減少した(p<0.001)。また、 発達評価において全般的に発達年齢の上昇または維持傾向がみられたことから、イズカーゴ®はムコ多糖症II型の中枢神経系症状の発現並びに進行を抑制する可能性が示唆された。血清中HSおよびDS濃度、肝臓および脾臓の容積などの評価から、全身症状への有効性はイデュルスルファーゼと同程度であることが示唆された。

副作用はいずれも軽度 で、一過性であり、管理可能であった。副作用発現頻度は53.6%(15/28例)であった。主な副作用(2例以上に発現)は、発熱39.3%(11/28例)、蕁麻疹10.7%(3/28例)、悪寒7.1%(2/28例)であった。

文献

  1. Okuyama T, et al. Mol Ther. 27(2): 456-464, 2019. (PMID: 30595526)
  2. Okuyama T, et al. Mol Ther. 29(2): 671-679, 2021. (PMID: 33038326)
  3. 社内資料:JR-141の臨床薬理試験 (2021年3月23日承認、CTD2.7.2.3)
  4. 社内資料:JR-141のムコ多糖症II型患者を対象とした第Ⅱ/Ⅲ相試験 (2021年3月23日承認、CTD2.7.6.3)
  5. A Study of JR-141 in Patients With Mucopolysaccharidosis Type II: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03128593. 2022/7/11.
  6. A Study of JR-141 in Patients With Mucopolysaccharidosis II: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03568175. 2022/7/11.
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