診療科別の症状・整形外科領域
Point

整形外科において診断の契機となり得る症状・所見

  • 骨変形(分厚い頭蓋冠、オール状肋骨、下位胸・腰椎体の変形など) ※Ⅲ型では目立たない
  • 脊柱管狭窄症、脊髄圧迫所見
  • 関節拘縮(鷲手、ばね指、関節可動域制限) ※Ⅳ型では関節弛緩、過伸展

ムコ多糖症では、結合組織細胞の内外にグリコサミノグリカン(GAG)が蓄積し、軟骨・骨組織の障害が引き起こされます。障害部位は頭蓋、手指、脊椎、大腿骨頭が代表的で、そのほか脊椎間関節や肩、肘、膝、足などの関節にも障害が生じます1)

骨・関節の障害はムコ多糖症Ⅳ型に特に強く認められ2)、Ⅰ型重症型、Ⅱ型重症型、Ⅵ型、Ⅶ型にも認められます。Ⅲ型の骨・関節病変は軽度で、整形外科的な介入が必要となることはまれとされています3)

骨・関節病変の特徴

新生児期から骨X線所見として椎体や肋骨の変化が観察され、一般的には1歳を越えてから膝関節、肘関節の拘縮が徐々に出現します3)

デルマタン硫酸とヘパラン硫酸が蓄積するムコ多糖症Ⅰ型とⅡ型は、比較的共通した骨・関節病変を呈します。手指の関節、特に遠位指節間関節(DIP)の拘縮による鷲手が特徴的です3)

ムコ多糖症Ⅲ型は他の病型と異なり、骨・関節病変は軽度です4)

ムコ多糖症Ⅳ型では、他の病型と異なり関節の弛緩、過伸展が認められるのが特徴です。蓄積するGAGの主体がケラタン硫酸であることと関連している可能性があります3)

多発性異骨症(dysostosis multiplex)

ムコ多糖症に特有の骨・関節病変は、多発性異骨症(dysostosis multiplex)とも呼ばれます5,6)

多発性異骨症の代表的な所見として、分厚い頭蓋冠、オール状肋骨、下位胸・腰椎体の変形(楔状変形、下縁突出)、脊椎後弯、大腿骨頭の低形成、外反股、不整形の腸骨翼、長管骨骨端部の変形・低形成、指趾骨の弾丸状変形、中手骨近位端の狭細化などがあります7)

骨・関節病変に対する外科的処置

脊椎形成不全・変形による脊髄圧迫症状や重度の股・膝関節変形、手根管症候群に対して、整形外科的手術が行われます。

文献

  1. 折居忠夫. 軟骨・骨組織の障害. 折居忠夫ほか編. ムコ多糖症UPDATE. イーエヌメディックス; 2011. p.35-39.
  2. Hendriksz CJ. et al. Mol Genet Metab 110(1-2): 54-64, 2013.
  3. 濱崎考史. 医学のあゆみ 264(9): 843-849, 2018.
  4. 知念安紹. 小児科診療 79(Suppl): 284, 2016.
  5. Palmucci S. et al. Insights Imaging 4(4): 443-459, 2013.
  6. 小須賀基通ほか. 小児科診療 78(suppl): 40-43, 2015.
  7. 小須賀基通. 小児科臨床 73(5): 714-719, 2020.