ムコ多糖症とは 疾患の概要

疾患の概要

ムコ多糖症は、グリコサミノグリカン(GAG)の段階的な分解に関わるライソゾーム酵素の欠損、あるいは活性低下により、GAGが細胞内に過剰蓄積することによって生じる()、ライソゾーム病の一種です。

図・ムコ多糖症の発症機序

図・ムコ多糖症の発症機序

GAGの分解に関与するライソゾーム酵素は、10種類以上存在します。また、GAGにはデルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸などがあります。

ムコ多糖症は、欠損酵素や蓄積するGAGの違いなどにより、Ⅰ型からⅨ型まで七つの病型に分類されています()。遺伝形式はムコ多糖症Ⅱ型のみがX連鎖潜性(劣性)遺伝、その他の病型は常染色体潜性(劣性)遺伝です。

:Ⅴ型とⅧ型は欠番

表・ムコ多糖症の分類

表・ムコ多糖症の分類
小須賀基通. 小児科臨床 73(5): 714-719, 2020. 一部改変

用語解説

ライソゾーム病

ライソゾームは、細胞内の物質の分解を主な役割とする細胞小器官の一つです。ライソゾーム内には数十種類の加水分解酵素が存在し、それぞれ特定の基質の分解を行っています。

ライソゾーム病は、ライソゾーム内の特定の酵素の遺伝的欠損により、本来代謝されるべき基質が細胞内に過剰に蓄積することによって発症する疾患の総称です。

これまでに50種類あまりのライソゾーム病が報告されています1)
グリコサミノグリカン(GAG)

GAGは、アミノ糖(ガラクトサミン、グルコサミン)とウロン酸(グルクロン酸、イズロン酸)またはガラクトースが結合した二糖類が反復して直鎖状に結合した多糖類です。

ムコ多糖症では、ライソゾーム酵素の欠損、あるいは活性低下により、GAGが細胞内に過剰蓄積します。ムコ多糖症の各病型において蓄積するGAGは以下の通りです。

ムコ多糖症Ⅰ型:デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸
ムコ多糖症Ⅱ型:デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸
ムコ多糖症Ⅲ型:ヘパラン硫酸
ムコ多糖症Ⅳ型:コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸
ムコ多糖症Ⅵ型:デルマタン硫酸
ムコ多糖症Ⅶ型:デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸

文献

  1. 衞藤義勝. 医学のあゆみ 264(9): 717-720, 2018.