ムコ多糖症の診断 診断の流れ

診断の流れ

ムコ多糖症の診断は、①臨床症状・所見(全身骨単純X線所見を含む)や病歴・家族歴(ムコ多糖症Ⅱ型のみ)の確認、②蓄積物質(グリコサミノグリカン)の確認、③責任酵素の欠損の確認――によって行われます()。

図・ムコ多糖症の診断の流れ

図・ムコ多糖症の診断の流れ
小須賀基通. 小児科臨床 73(5): 714-719, 2020. 一部改変

ムコ多糖症の診断のために行われる検査など

一般検査・画像検査

ムコ多糖症は、一般の血液検査・尿検査では異常値を示しません。

ムコ多糖症に特徴的な骨・関節の変形、異常を確認できる検査として、全身骨単純X線検査があります。ムコ多糖症における骨・関節病変は、多発性異骨症(dysostosis multiplex)とも呼ばれます。

多発性異骨症の代表的な所見として、分厚い頭蓋冠、オール状肋骨、下位胸・腰椎体の変形(楔状変形、下縁突出)、脊椎後弯、大腿骨頭の低形成、外反股、不整形の腸骨翼、長管骨骨端部の変形・低形成、指趾骨の弾丸状変形、中手骨近位端の狭細化などがあります1)
病歴・家族歴聴取

乳幼児期に臍・鼠径ヘルニアに対するヘルニア修復術を受けていないか、繰り返す中耳炎を経験していないかなど、病歴聴取を丁寧に行うことがムコ多糖症を疑う契機となる可能性があります。

X連鎖潜性(劣性)の遺伝形式をとるムコ多糖症Ⅱ型を診断する上では、母方の家系に本症を疑わせる症状を持つ親族がいないかなど、家族歴を確認することも重要です。
尿中グリコサミノグリカン分析

臨床症状・所見や病歴・家族歴からムコ多糖症が疑われた場合は、尿中のグリコサミノグリカン(GAG)を分析することにより、ムコ多糖症のスクリーニングや病型の推測ができます。

体内に蓄積したGAGは尿中に排泄されるため、ムコ多糖症患者のGAGもしくはその構成成分であるウロン酸の尿中濃度は高値を示します。

尿中GAG分画比は病型ごとに特徴的なパターンを示すため、定量と同時に尿中GAG分画を分析することにより、病型を推測することができます。GAGのうちデルマタン硫酸とヘパラン硫酸がともに高値の場合はムコ多糖症Ⅰ型かⅡ型、ヘパラン硫酸のみが高値の場合はⅢ型が疑われます。デルマタン硫酸が優位に増加し、知的障害がない場合はⅥ型が疑われます。ケラタン硫酸が優位に増加している場合はⅣ型が疑われますが、Ⅳ型の軽症型や成人例ではケラタン硫酸が検出されないことが多いため、注意が必要です1,2)
ライソゾーム酵素活性測定

尿中GAG分析および臨床症状・所見などからムコ多糖症の病型を推測できた場合は、各病型の責任酵素の活性を測定することで確定診断できます。

検体としては末梢血中白血球が用いられることが多いですが、培養線維芽細胞が用いられることもあります2)

近年、一部の病型では、乾燥ろ紙血検体を用いた酵素活性測定も行われています。
遺伝子検査

遺伝子検査により責任遺伝子に既知の病的変異を同定することで診断を確定することもできますが、変異を同定できなかった場合でも疾患を否定することはできません2)

遺伝子検査は、酵素活性が残存している軽症型や、酵素活性が低下していても症状を呈さないpseudodeficiency(偽欠損)の鑑別にも有用です1)

文献

  1. 小須賀基通. 小児科臨床 73(5): 714-719, 2020.
  2. 濱崎考史. 医学のあゆみ 264(9): 843-849, 2018.