耳鼻咽喉科において診断の契機となり得る症状・所見
- 反復性の滲出性中耳炎
- 難聴
- 扁桃・アデノイド肥大
- 睡眠時閉塞性無呼吸
ムコ多糖症における耳鼻咽喉科領域の問題点として、難聴と呼吸障害があります。
難聴、呼吸障害の発症機序
グリコサミノグリカン(GAG)が鼻咽腔、耳管、中耳粘膜に沈着して肥厚が生じ、反復性の滲出性中耳炎を呈します。中耳粘膜の肥厚や耳小骨の変形は伝音難聴の原因となります。GAGは内耳にも沈着し、進行性の感音難聴を引き起こします1)。
GAGの沈着に伴う上咽頭、中咽頭粘膜の肥厚や扁桃・アデノイドの肥大により、睡眠時閉塞性無呼吸を呈します。GAGは喉頭や気管にも沈着して肥厚、狭窄を生じさせ、呼吸障害の原因となります1)。
耳鼻咽喉科領域の症状の頻度
ムコ多糖症Ⅱ型のレジストリー登録症例263例(平均年齢13.5歳)の集計において、中耳炎の頻度は74%(発症年齢中央値1.2歳)、扁桃・アデノイド肥大の頻度は68%(同2.9歳)と報告されています2)。
同じくムコ多糖症Ⅱ型のレジストリー登録症例554例の集計において、中耳炎(慢性・急性)の頻度は72.4%(発症年齢中央値1.9歳)、難聴(伝音・感音)の頻度は67.3%(同4.8歳)と報告されています3)。
耳鼻咽喉科領域の症状に対する外科的処置
反復性の滲出性中耳炎に対しては鼓膜チューブ留置術、扁桃・アデノイド肥大に対しては扁桃摘出術やアデノイド切除術が行われます1)。
ムコ多糖症Ⅰ型のレジストリー登録症例544例の集計において、重症型(295例)における鼓膜チューブ留置術の施行割合は57%(初回施行時年齢中央値1.4歳)、アデノイド切除術・扁桃摘出術の施行割合は37%(同2.2歳)と報告されています4)。
ムコ多糖症Ⅱ型のレジストリー登録症例の集計において、鼓膜チューブ留置術の施行割合は49.6%(275/554例、施行時年齢中央値3.5歳)、アデノイド切除術の施行割合は47.4%(267/563例、同3.5歳)と報告されています3)。
文献
- 守本倫子. 耳鼻科領域の障害. 折居忠夫ほか編. ムコ多糖症UPDATE. イーエヌメディックス; 2011. p.40-41.
- Wraith JE. et al. Genet Med 10(7): 508-516, 2008.
- Keilmann A. et al. J Inherit Metab Dis 35(2): 343-353, 2012.
- Arn P. et al. J Pediatr 154(6): 859-864.e3, 2009.