診療科別の症状・小児科領域
Point

小児科において診断の契機となり得る症状・所見

  • 広汎かつ濃染な蒙古斑
  • 臍・鼠径ヘルニア(ヘルニア修復術の既往)
  • 特徴的な顔貌(鞍鼻、分厚い口唇、巨舌および舌挺出、幅広く分厚い鼻翼、濃い眉毛、頭囲拡大など)
  • 低身長 ※乳幼児期は過成長
  • 精神発達遅滞 ※Ⅰ型重症型、Ⅱ型重症型、Ⅲ型、Ⅶ型
  • 関節拘縮(鷲手、ばね指、関節可動域制限) ※Ⅳ型では関節弛緩、過伸展
  • 骨変形(分厚い頭蓋冠、オール状肋骨、下位胸・腰椎体の変形など) ※Ⅲ型では目立たない
  • 反復性の滲出性中耳炎
  • 腹部膨満(肝脾腫)
  • 心弁膜症(特に僧帽弁、大動脈弁)

ムコ多糖症は、新生児期には広汎かつ濃染な蒙古斑と臍・鼠径ヘルニア以外には目立った症状がないため気付かれにくいですが、年齢とともにさまざまな症状・所見が顕在化します。

幼児期以降に顕在化する症状・所見

幼児期以降に顕著となり、診断の契機となり得るムコ多糖症の症状・所見として、特徴的な顔貌、精神発達遅滞(Ⅰ型重症型、Ⅱ型重症型、Ⅲ型、Ⅶ型)、関節拘縮(Ⅳ型では関節弛緩、過伸展)、骨変形(Ⅲ型では目立たない)、反復性中耳炎、腹部膨満、心弁膜症などがあります1)

ムコ多糖症Ⅲ型は他の病型と異なり骨変形は軽度で、進行性の重度精神発達遅滞を特徴とします。新生児期・乳児期の正常発達後に運動面より言語性の発達遅延が明らかになり、成長に伴って多動・不眠などの行動障害・睡眠障害と知的障害が徐々に進行します2)

頻度が高い症状・所見

ムコ多糖症Ⅰ型のレジストリー登録症例987例の集計において頻度が高かったⅠ型重症型(601例)の症状・所見は、特徴的な顔貌(86.4%、発症年齢中央値0.9歳)、角膜混濁(70.9%、同1.1歳)、脊椎後弯(70.0%、同1.0歳)、肝腫大(70.0%、同1.1歳)、ヘルニア(58.9%、同0.8歳)、睡眠障害・騒音呼吸(51.6%、同1.2歳)、脾腫(50.9%、同1.2歳)でした3)

ムコ多糖症Ⅱ型のレジストリー登録症例263例(平均年齢13.5歳)の集計において頻度が高かった症状・所見は、特徴的な顔貌(95%、発症年齢中央値2.4歳)、肝脾腫(89%、同2.8歳)、関節拘縮(84%、同3.6歳)、腹部ヘルニア(78%、同1.3歳)、耳炎(74%、同1.2歳)、巨舌(70%、同3.4歳)、扁桃・アデノイド肥大(68%、同2.9歳)でした4)

文献

  1. 小須賀基通. 小児科臨床 73(5): 714-719, 2020.
  2. 知念安紹. 小児科診療 79(Suppl): 284, 2016.
  3. Beck M. et al. Genet Med 16(10): 759-765, 2014.
  4. Wraith JE. et al. Genet Med 10(7): 508-516, 2008.